ちば産保コラム
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新型インフルエンザほか感染症への備え 第2章 さまざまなインフルエンザ
相談員コラム
山瀧相談員 君津健康センター産業医
1 インフルエンザウイルスの型・亜型について
インフルエンザウイルスは構成する物質の違いにより、鳥類や家畜・ヒトにまで幅広く分布するA型、ヒトのみに分布しA型に比べ症状が強くないB型、同じくヒトにのみ分布し流行しないC型の三種類に分けられます。
このうちA型はウイルス表面にある物質の組み合わせから、更に144種類の亜型に分類されます。カモなどの水禽はこの全ての種類を持っており、かつ症状がほとんどないため、ニワトリやブタなど他の動物にウイルスを広げる役割を持っているのではないかといわれています。ヒトやブタではそれぞれの種に適応したA型のウイルスが流行しています。2009年以前でヒトに流行がみられたインフルエンザウイルスは、主にAソ連型、A香港型、B型の三種類でした。2009年のパンデミックで出現したウイルスは、ヒト、ブタ、ニワトリの間で流行していたそれぞれのウイルスの遺伝子が混じりあったものといわれています。
2 高病原性トリインフルエンザウイルスとヒトへの拡大
ニワトリに流行するA型インフルエンザウイルスのうち、変異してニワトリに対し強い病原性を持つようになったものを高病原性トリインフルエンザウイルスと呼んでいます。
1990年代以降、この高病原性トリインフルエンザウイルス(H5N1)がヒトに感染するケースが報告されるようになってきました。ヒトへの感染は主に東南アジアや中東、アフリカなどで報告されていますが、急速に進行する肺炎や多臓器不全などで死亡率は60%近くにのぼっています。季節性インフルエンザに対するワクチンは無効で、治療として早期の抗インフルエンザ薬などが試みられています。
このウイルスが変化し、ヒトに激しい症状を起こす性質を維持したままヒトからヒトへ感染する性質を獲得すると、新種のウイルスとして大流行し甚大な被害をもたらす恐れがあります。今回の流行が収束したといっても、この新たなウイルス(H5N1)の出現の可能性がなくなったわけではないため、引き続き厳重な監視と備えが必要です。