独立行政法人 労働者健康安全機構 千葉産業保健総合支援センター

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ちば産保コラム

  • 労働衛生専門職(両立支援担当)に就いて

    労働衛生専門職コラム

    千葉産業保健総合支援センター 

    労働衛生専門職(両立支援担当) 原 文伯

     

    2か月ほど前になるが入院して病院のお世話になった。

    幸い深刻な病気ではないものの2週間以上の入院となり、病気の回復にも退院後の体力の回復にも思った以上に時間がかかり60代という自分の年齢を感じざるをえなかった。ましてや治療と仕事の両立支援の専門職としての仕事に就いて1か月たったばかりである。あまりにもタイミング良く(悪く)入院を経験し、職場に迷惑をかけることになったのは誰のいたずらかと思ったくらいだ。

    突然入院となると先ずは仕事で迷惑をかけてしまう職場に申し訳なく身が縮む。

    職場に連絡したところ、治療と仕事の両立につながる経験ができて丁度良かったね的な温かい言葉をいただき大いに安堵したものだ。

    比較にならないと思うが、がんや難病に罹って治療と仕事の両立をしている人達の職場への思いはどれだけ複雑だろうか。

    もし自分しかできない仕事をやっていたら途中でストップしてしまうことに申し訳なく、また悔しさも感じよう。どうしても代理を立ててもらわないといけない仕事もある。代わりが入ったからと言って慣れるまでは周りの人にカバーしてもらわねばならず周囲に迷惑をかけることに変わりはない。

    どうして病気になったのか、自分の不摂生を責めてしまうこともあろう。

    これから生きられる時間ということを意識するようなこともあろう。

    治療中は体力的にもきついし、周囲に対する気遣いもあるからいっそのこと

    身を引いた方が楽になれると考えてしまうことはないか。

    そうは言ってもがんの治療には結構お金がかかる、治療を継続するためにも

    働かなくてはならない、等々ちょっと想像しただけでも色々浮かんでくる。

    患者の中にはうつを併発する人もいると聞くがまさにがんとの戦いは自身の

    メンタルとの戦いでもある。

     

    一方でがんに罹った従業員を抱える企業側の対応はどうなのだろう。

    大企業では私傷病のための様々な休暇制度があり、抗がん剤治療や放射線治療など治療方法に合った柔軟な取得が可能であったりする。また就業上の配慮にも多くの経験が生かされていることが考えらえる。

     

    しかしながら、そのような便利な休暇制度を持たず、また治療中の従業員にどう対応したら良いか分からず戸惑っている中小零細な企業が多いことも想像される。働けるなら働いてもらいたいが、無理して働いて今より悪くなっても困る。できればちゃんと治して万全な状況になってから復帰してもらいたい、などと考える経営者が多いのではないか。

    がんと診断された従業員は精神的に落ち込んでいる上に前述したとおり会社や同僚に迷惑をかけたくないという思いが強い。がん治療に関する正しい知識がなければ、退職して治療に専念した方が良いのではとの思いが強くなるのもうなずける。

    そのためか、がんと診断された時点で退職する人が2~3割もいると言われている。

     

    働いている人にはがんなどの病気治療に関する正しい知識と両立支援について知っていただき、早まった退職を選択しないよう幅広く周知が必要である。

    また、すべての事業者に治療と仕事は両立できることを理解いただき、がんと診断された従業員を温かく受け入れられる職場環境を作っていただけるようにあらゆる機会を捉えて働きかけていかねばならない。

     

    当面これ以上病気になってゆっくり休んでいる暇はないと自分に言い聞かせているところである。