共同研究者 千葉産業保健推進センター相談員 能川浩二
千葉産業保健推進センター相談員 城戸照彦
千葉産業保健推進センター相談員 吉田之好
千葉産業保健推進センター相談員 仙波正義
千葉産業保健推進センター副所長 戸嶋禮助
千葉県下において、平成元年から5年間、千葉市にある千葉鉄工業団地を対象に地区労働衛生相談医制度モデル事業が実施されました。本調査研究は、本事業の対象事業場28社の労働者にかかる5年間にわたる一般健康診断の結果を分析し、中小企業における健康管理の特性を明らかにし、今後の産業保健活動の推進に一石を投じようとするものです。
2 対象と方法
千葉鉄工業団地の参加事業場は28社、総従業員数は約2,350人、その内、23事業場が従業員100人未満の中小規模事業場です。本調査は、実際には、これらの対象事業から健診成績に不備があった事業場などを除いた17社、1,591人を各年度別、男女別に解析したものです。受診者の各年度並びに5年間の平均年齢は概ね39才〜44才の間で推移し、平均年齢は男41.4才、女40.6才でした。健診はすべて外部の健診機関に委託して実施され、その健診機関もバラバラで13機関にも及ぶため、各検査項目の評価は平均値によらず基準値を示して、それに基づく有所見率の推移としてまとめました。
3 結果
各年度とも男性の方が高く、平均では男6.9%、女1.9%と3.6倍の差を示しています。 (6)肝機能検査(GPT)
GOTと同様、各年度とも男性の方が高く、平均では男12.7%、女2.9%と4.4倍の差を示しました。
(7)肝機能検査(γ−GTP)
各年度とも男性の方が著しく高値で、平均で男11.2%、女0.8%と14倍もの差を認めました。
(8)尿酸
男性では4年間の平均で5%見られるが、女性には該当者がいませんでした。
4 考察
今後の当工業団地の健康管理上、改善を要することとしては、次の点が指摘できます。
(1)企業間の較差を是正するために、担当者の健康意識レベルの向上を図ること。
(2)今回の調査研究結果を活用した健康教育を実施して、従業員の健康意識の高揚を図ること。
(3)健診の事後措置を充実させるため、継続的な健康相談が実施できる体制を作ること。
(4)高血圧や高脂血症等の成人病対策は、大企業同様中小企業における健康管理上も重要な課題であり、ライフスタイルの改善や、THPの普及等を積極的に推進していく必要があること。