共同研究者 千葉産業保健推進センター相談員 能川浩二
千葉産業保健推進センター相談員 吉田之好
千葉産業保健推進センター副所長 戸嶋禮助
千葉産業保健推進センター所長 荘司榮徳
本調査は千葉県下のある労働基準監督署の管内の労働者数50名以上の事業所を対象として、産業医の活動内容を事業所の業種、規模ごと、あるいは報酬ごとに調査したもので、これまでこのような調査は余り行われていなかったので、産業医活動の実際の評価はどのようなものかを知る上でまことに有用なものと考えられます。
2 対象と方法
254社に対して質問票を郵送し、164社から回答を得ました。回収率は65%になります。
3 結果
(1)業種並びに規模別事業所数 産業医を選任していると回答があった事業所は142社(87%)でした。これを業種別に見ると、製造業が35%と最も多く、次いで、その他の事業25%、運輸交通業16%の順でした。また、事業所の規模では労働者数100〜299人が最も多く73社(51%)、次いで50〜99人が39社(28%)でした。(2)産業医への報酬報酬別に最も多いのは「月額1万円以上3万円未満」(42%)、次いで「月額3万円以上5万円未満」(18%)の順でした。また、「契約時に払ったのみ」、「盆、暮れの贈物程度」、「月額1万円未満」も合わせると11%にも達しました。 (3)事業所規模別に見た現在の産業医の業務内容事業所が産業医にやってもらっている業務内容についての回答を見ると、全体では「健診の事後措置」(78%)、「健診の実施」(63%)、「健康相談・保健指導」(61%)が高率で、「健康保持増進ホ策のための指導」(28%)、「健康障害があった場合の原因調査」(32%)、「安全衛生委員会への参加」(32%)、「衛生教育」(36%)、「定期的な職場巡視」(41%)は低率でした。 (4)報酬別に見た産業医の業務内容最も比率の高い「月額1万円以上3万円未満」の報酬では、「健診の事後措置」(75%)、「健診の実施」(56%)はそれぞれ全体の実施率に近い値を示していますが、「健康障害の原因調査」(15%)、「健康増進対策」(19%)、「安全衛生委員会への参加」(20%)は全体をかなり下回っております。
また、「月額の報酬が3万円以上」では、ほとんどの業務で全体の実施率を上回ると共に、「職場巡視」や「安全衛生委員会への参加」では、報酬金額に応じて実施率が高くなる傾向が認められました。
一方、「月額3〜5万円」では「年に数回程度」(44%)、「月額5〜10万円程度」では「月1回程度」(50%)、「月額10万円以上」では「週1回程度以上」(58%)がそれぞれ最高頻度を示しており、報酬に応じて訪問回数が増加している傾向が顕著に認められます。
報酬別に該当する事業場が最も多い「月額1万円以上3万円未満」では健診に関することは事後措置も含めて高い実施率を示したが事業所への訪問頻度では「年数回程度」が半数を上回り、職場巡視や安全衛生委員会への参加はさらに低率であること。報酬が「月額3万円以上」になると、報酬額の上昇に応じて事業所への訪問回数や巡視、委員会への参加の実施率が高まる傾向が顕著であること等が判りました。